やってみよう! オーバーホール
〜 腰下編 〜


エンジンから異音がしたらO/Hの時期です。

■ 腰下を割る ■

 車体上で外せる部品はあらかじめ外しておき、クランクケースをフレームからおろします。
あとは部屋の中に持ち込み、ゆっくりじっくり作業しましょう。

 ←赤丸印の場所9か所のボルトでクランクケースは結合されています、かなり奥まっているのでロングソケットを使って外しましょう。

 ネジをはずしたら、いよいよクランクケースの分割です。
たいていの場合、固着していますので、プライポイントをこじりながらゆっくり分割します。

クランクシャフトベアリングが圧入されているため、簡単には外れません。
創意と工夫と根性で、なるべくクランクシャフトやケースに負担を掛けないように注意して外します、焦ったら負けです。


※プライポイント以外の場所にドライバーやバールを差し込まないように注意!
ケースの接合面に傷が付くと、オイル漏れの原因になります。

左右クランクケースを分割
右側
左側

 無事分割できました、たいていの場合、クランクシャフトは右側ケースにのこります、左側クランクシャフトベアリングはクランクシャフトに付いてきます。

トランスミッションを外す
外したトランスミッション

 ドライブシャフト、アウトプットシャフト、シフトフォーク、シフトドラムなどをクランクケースから取り外します、固定されている部品ではないので引き抜くだけで簡単に外れます。

 外した部品は、油分を切らさないように保存しておきます、洗浄してそのまま放置は御法度です、すぐに錆びますよ。

クランクシャフト引き抜き
外されたクランクシャフト
 ほとんどの場合、右側クランクケースにクランクシャフトが残りますのでガンバって分離します、クランクシャフトは、非常に精度が高く作られているため、手荒に扱うことは厳禁です。

油圧プレスがあると簡単ですが、んなもの無いのでゴムハンマーで少しずつ打ち抜きました(^^;

 外観を見て歪みや傷などがないか確かめます、クランクピン部のベアリングの状態も確認し異常があるようであればAssyで交換となります。

 クランクシャフトの分解・組み立ては、個人では不可能です。
(バランス調整などする場合には内燃機関屋に持ち込みます)
ベアリング・オイルシールを外す
ベアリングを外す

 特殊工具「ベアリングプーラ」を使ってベアリングを引き抜きます、末永くバイクとつきあうためには、ぜひ持っていたい工具です。

KSRのエンジンには合計6個のボールベアリングが使われています、ドライブシャフト左側のローラーベアリングは、残念ながら取り外しできませんでした。

オイルシールは適当な工具で取り外します、オイルシールリムーバがあると簡単です。

外掛け式プーラ

 クランクシャフトに残った、左側クランクシャフトベアリングも外します、外掛け式のプーラーが必要です。

部品洗浄
KSRエンジン分解ピンナップ
 クランクケースに取り付けられた部品をすべて外して腰下の全分解の終了です。

 クランクケース接合面のガスケットや液ガスのカスを丁寧に取り除きます。
組み立てに備え各部品をキレイに洗浄し、さび止めの油を塗布します(アルミ製パーツ・樹脂製パーツは除く)
■ 腰下組み立て ■
家庭用コンロで加熱(^^;

 腰下の分解&クリーニングが終わったらいよいよ組み立てです。
分解と逆の順序で組み立てていきます。


 外したベアリングやオイルシールは基本的に再利用せず、新品に交換します。
サービスマニュアルでは油圧プレスによりベアリングを圧入するように指示がありますが、今回は「焼きバメ」技法で組み込むことにしました。

 ※焼きバメ 2種類の金属の熱膨張差を利用してはめ込む技法。
アルミは鉄より膨張率が高いので、加熱することにより隙間を広げます。
ヤケドに注意!!

ベアリング・オイルシール圧入
シフトシャフト部オイルシール圧入

 ベアリングやオイルシールを圧入します、焼きバメの効果でスムーズに取り付けられますが、きつい場合にはベアリングドライバとゴムハンマーで打ち込みます。
 斜めに入らないようにベアリングレース部を均等に力を加えるのがコツです。

 オイルシールには底付圧入と面位置圧入がありますので注意して下さい。

トランスミッション・クランクシャフト組み付け
右側ケースに組み込み
 ベアリング、オイルシールなどの取り付けが完了したら、クランクシャフトを右側クランクケースのクランクシャフトベアリングに圧入します。

 サービスマニュアルでは、クランクウェブにくさびを挟み込み油圧プレスで圧入という手荒な方法でカワサキらしさを感じますが、引き込み治具を製作するとスマートに所定位置に納まります。

 クランクシャフト取り付け後、トランスミッションを組み付けます。
シフトドラム・シフトフォーク・ドライブシャフト・アウトプットシャフトの取り付け方を間違えないようにして下さい。
クランクケース結合
クランクシャフト引き込み治具
 つぎにクランクケースの結合です、結合前にクランクケース無いにゴミが残っていないか、部品の取り付けが正しいか最終確認をします。

 クランクケースの接合面には、液体ガスケットを塗布します。
今回は3Mの1215を使用しました、なるべく薄く均等に塗るのがコツです。
乾燥に3日かかるので余裕を持った組み立て計画を立てましょう。

 サービスマニュアルではここも油圧プレスで圧入となっていますが、引き込み治具を作成しました。

おかげで苦労なくクランクの結合が出来ました。

 無事にクランクケースの結合が完了しました、クランクケースを止めていた9本のボルトを対角線上に均等に規定トルク(0.8kg-m)で締め付けます。


 その後、クランクのセンターだしを行いクランクシャフトがスムースに回転するか確認しておきます。
クランクケース外部機構組み付け
分解と逆の順番で組み立て
 クランクケースの結合が終了したら、後は難しい作業はありません、
分解したのと逆の順番で、丁寧に組み上げていきます。

 分解時はなるべく車体上で分解しましたが、組み立ては車体に載せる前に済ませてしまった方が簡単です。


 作業に熱中し写真を撮るの忘れました、いきなり組上がってすんません。
耐熱塗装
適当なマスキングで耐熱黒をぬる
 エンジンの組み立てが完了したので、サビの浮き始めたシリンダーに耐熱塗料を塗りました。

 シリンダーを腰下に取り付ける前に、塗装しておいた方が良かったかも。

〜 作業完了! 〜
完成! エンジンがかかると感動です!

エンジンをフレームにマウントして各ワイヤーやホースをつなぎ、ギアオイルクーラントを
注入後エア抜きをしてからエンジンを始動します、しばらくの間、混合ガソリンを使っ
てアイドリングさせ、オイルポンプの調整などをします。


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● おまけ ●
コレを交換するために大分解・・  エンジン分解の原因となった部品、右側クランクシャフトベアリングです。
 ベアリングレース部の金属が鱗状にはげ落ちています、「フレーキング」という状態です。

 私のエンジンの場合、これが原因で異音が発生していたようです、2万3千キロ程度の走行でこうなりました。

 一定のアクセル開度で走行中にエンジンから唸りが聞こえたり、アイドリング中に軸ぶれを起こしたような音が聞こえたら、クランクシャフトベアリングを交換するのが良さそうです。

● O/Hにかかった費用・部品代等 ●
見出し
部品名
部品番号
単価
数量
小計
92045
601
601B
92045B
92045A
601A
653
92049A
92049
92051
92055
220
220A
92043A
92043
13088
13089
92144
11009
11060
92051
11004
11009
92043
92036
13002
13008
13001
13033
92027
11009
92045-1059
601B6201
601B6203Z
92045-1171
92045-1061
601B6203
653B203508
92049-1409
92049-1048
92051-005
92055-1235
220B0610
220B0614
92043-1263
92043-1262
13088-1093
13089-1009
92144-1388
11009-1896
11060-1172
92051-003
11004-1371
11009-1893
92043-1262
92036-007
13002-1085
13008-1131
13001-1335
13033-1009
92027-1365
11009-1894
ベアリング(ボ-ル),R-6304C3
ボ-ル ベアリング,#6201C3
ボ-ル ベアリング,#6203ZC3
ベアリング(ボ-ル),6804
ベアリング(ボ-ル),R-6205C3
ボ-ル ベアリング,#6203C3
オイル シ-ル(PKガタ),TB20358
シ-ル(オイル)
シ-ル(オイル),SC22325
オイル シ-ル,TB13225.5
リング(0),16.8MM
ナベコネジ(+ジアナ),6X10
ナベコネジ(+ジアナ),6X14
ピン,6.2X8X14
ピン,4.2X6X12
プレ-ト(フリクシヨン)
プレ-ト(クラツチ)
スプリング,クラツチ
ガスケツト,クラツチ カバ-
ガスケツト,ゼネレ-タ カバ-
オイル シ-ル,TB16267
ガスケツト(ヘツド)
ガスケツト,シリンダ ベ-ス
ピン,4.2X6X12
サ-クリツプ,ピストン ピン
ピン(ピストン)
リングセツト(ピストン),STD
ピストン(エンジン),STD
ベアリング(スモ-ルエンド)
カラ-
ガスケツト,エキゾ-スト ホルダ
1,080
470
510
1,150
1,030
430
440
310
250
230
150
40
40
60
120
800
390
170
570
440
250
990
220
120
110
490
1,840
2,480
660
170
230
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
2
1
2
2
4
3
6
1
1
1
1
1
2
2
1
1
1
1
2
1
1080
470
510
1150
1030
430
440
310
250
230
150
80
40
120
240
3200
1170
1020
570
440
250
990
220
240
220
490
1840
2480
660
340
230
全体合計
20,890円

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2003/4/24作成